「つけられてる?」
「まさか、お前ほんと自意識過剰だな。誰もお前なんか好き好んで尾行するか!」
ルシウスは突っかかってきたアーサーをじとりと睨むと、溜息を吐きながら言った。
「君はいちいち人に文句しかつけられないのか?私じゃない、に、だ。」
に?」










Sweet Memories



- Memory 6 -








パブ・三本の箒についたルシウスは、頼んだバタービールを待っている間にがトイレに行くのを見計らって、話し始めた。
「君らに話しても無駄だと思うが......ホグズミードに着いてからずっとだ。誰かにつけられてる気がする。」
ルシウスたちは店の隅の席に座って、テーブルを囲んでいた。いつもなら有り得ない光景だ。
「誰に?あの子たち....じゃないわよね?」
そう言ってモリーがカウンター席のジェームズたちを指差すが、ルシウスは呆れたように首を横に振る。
指差された当人たちは、まずい、と言った表情で、それぞれグラスで顔を隠した。
「分からないが、まぁ、私がいるから問題ないと思う。」
「ほう、そりゃあ大した自信だな。」
「でも、ボディーガードくらいいるかもしれないわよ?結構氏って過保護だって聞くもの。」
モリーの言葉にルシウスは苦笑いをして頷く。
「まぁ、ね。」






楽しい時間はすぐに過ぎてしまうもので。

アーサー達と別れた後、しばらく二人でいろいろなお店を回って、すぐに辺りも日が沈みかけて茜色に染まっていた。
ホグワーツの生徒がどんどん帰途につき、とルシウスも並んで彼らと同じ方向に歩いていた。
ルシウスの手には大きな買い物袋が。にプレゼントしたものだ。

「今日は、本当に楽しかったです。プレゼントも、どうもありがとうございます。」
「そうか。それは光栄だな。」
「マルフォイ先輩のこと、少し、知ることができたし。」
はそう言って、照れているのか胸の前で自分の指をいじっていた。
「それで?私は君の合格点に届いたかな?」
ふざけていつもの笑みをニヤ、と浮かべると、ルシウスはここが街頭にも関わらず、の腰に空いた方の手を回し、彼女を抱き寄せる。
驚いて目をパチパチさせ、顔を赤くしているは、また彼の視線から目をそらすと頷いて言った。
「もちろん、です。」
(何てこと言わせるのよ...。)
彼の視線にはもう慣れたと思ったが、やはり間近で見られると心臓は早鐘のように鳴る。




、顔を上げて?」




甘い声でそう囁かれて、が思わず言われたとおり顔を上げると

ふわっと唇に触れるだけの、優しいキスが降ってきた。



あまりにも一瞬の事で、の瞳はただルシウスの灰色の瞳が遠ざかったのを追っていただけで。
彼が微笑んで、また自分の背中を押して歩き出して、やっと状況が飲み込めた。

ひとつは、今彼が""と呼んでくれたこと。

ひとつは、今彼にキスされたということを。














自分の部屋に戻ってきてからのは、明らかに変だった。

「........はぁ.........。」

自分のベッドに横になり、ずっとぼーっとしながら、溜息ばかりつく。
「どうしたの、?」
リリーは彼女の顔を覗き込むが、またしてもの反応はない。
もちろん、とルシウスを尾行していた四人は、あの現場を目撃していたのだが。
「....なんかね、リリー....こう、なんか、いつもと違うのよ。」
ベッドから上半身起き上がって、は慎重に言葉を綴った。
「何が?」
「うん。今までいろんな人と出会ったけど、なんか、マルフォイ先輩は違うの。
 先輩の事考えると、すっごく胸が苦しくて...」
「え?そんなのいつものことじゃない?胸が苦しくて食事ものどを通らないんでしょう?」
ひやかすようにリリーは笑うが、は首を横に振ると、また頬を赤くしながら言った。
「違うのよ、リリー。私.....なんだか恥ずかしいけど、運命みたいなものを感じちゃって.......」
そこまで聞くと、リリーは大声を上げて笑い出した。
「ちょっと、リリー?!ここは笑うところじゃないよ!」
「やだ、ってば!」
まだクスクス笑っているルームメイトを睨む
「キスされたぐらいで....ファーストキスだったなら、話は別だけどね。」
半分冗談でそう言った筈なのに、から返ってきた反応は、リリーの予想外のものだった。

「だから、そうなんだってば!」
「え?」
「....今日が、初めてだったんだから....」
消え入りそうな声でそう言ったに、目と口を丸く見開いたまま、リリーは固まってしまった。



(呪ってやる!!!ルシウス・マルフォイ!!!!!!)













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