「なななななな、何??!!」

まるで、今まで生きてきた中で一番の大事件だと言わんばかりのアーサーの驚きぶりを見て、
周りにいるモリー、、リーマスのほうが逆に驚いてしまった。








Sweet Memories



- Memory 3 -










それは時遡ること3分前。






「スリザリンの合言葉?」
「はい。」
モリーと二人で仲良く食後のチェスをしていたアーサー・ウィーズリーは、すみません、と声をかけた後輩に愛想良く応えた。
「もちろん、知る訳ないよ。知ってるかい、モリー?」
ふるふる、と顔を横に振るガールフレンドに微笑んだ後、アーサーはまた不思議そうな顔をしてとリーマスを見た。
「何でまたスリザリンへ?あんなところ行っても、全くつまらないと思うがね。」
「あの、借りたものを返しに。それとお礼を言いたくて。」
アーサーは杖でたちの膝にティーカップを出し、次にティーポットを出して紅茶を注ごうとしながら尋ねた。
「誰に?」
「マルフォイ先輩です。」

ガチャンッ!

「あちぃっっ!!」
膝の上に紅茶を注がれたリーマスが叫び声をあげると、慌ててモリーが杖で氷を出して、彼の膝を冷やしてくれた。
「ちょっと、アーサー!気をつけなきゃ!」
「ん?あ...ああ、すまない。」
もうっと、怒っているモリーにいつもなら平常心ではいられないアーサーだったが、今回ばかりは彼女にかまっている余裕がなかった。
「は?マルフォイ?!嫌だ、嫌だ。あいつの名前をこんなところで聞くなんて!」
すごい嫌いっぷりだ。本当に仲が悪いんだな、とは感心する。アーサーの顔色が少し血が上っているように見えた。
「落ち着きなさいよ、アーサー。ところで、あ、そんな彼の事は気にしなくていいのよ。何を借りたの?」
上級生らしく優しく微笑むと、モリーはアーサーとは反対に、興味津々に身を乗り出して聞いてきた。
「ハンカチなんですけど。その、...私が泣いてたから.....」
話している途中で声がだんだん小さくなり、の頬が赤くなってくる。
その様子を見つめていたモリーは面白そうに、しかしアーサーの顔はみるみる青ざめていくのだった。
フフフ、と笑うと、モリーはの横に座っているリーマスに視線を移す。すると、彼は肩をすくめて言った。

「はい、まぁ、こういうことなんです。、マルフォイ先輩に一目惚れしちゃったみたいで。」









ということで、今に至る。


「信じられない!!!!!君は、頭がどうかしてる!!!!!
 よりにもよって、うちの寮からそんな...マルフォイに惚れただなんて!!!!」

バキッ!

「おかしいのはあなたのほうよ、アーサー!ひどいわよ、ねぇ?」
アーサーはモリーの顔面一発を受けて、涙目になって静かに席に着いた。
見守るとリーマスは、少し逃げ出したくなった。談話室にもう彼ら以外いないのが、余計原因だった。
「恋愛は自由なんだから。ごめんなさいね、この人、マルフォイとはどうしても上手くやれなくて。」
「上手くやろうなんて、一度も思ってない。」
「あーあー、はいはい。ところで、素敵よね。泣いている彼女にさりげなくハンカチだなんて。」
カッカしているアーサーを無視し、モリーはまた話を続ける。
「あなた、ね?よく噂は聞くから、すぐ分かった。」
「噂?」
今度はが不思議そうに首を傾げた。隣のリーマスは含み笑いをする。
「うん、確かにすごく可愛い。それに、"とても"恋愛経験が豊富だって。」
すると、は真っ赤になって下を向いた。
?あぁ、だからだよ君。奴は本当に純血だとか家名でしか、人の価値基準を定められない人間だ。
 きっと優しくしたのも、君が家の人間だからだよ。」
「ちょっと、2発目くらいたいの?」
じとり、とモリーに睨まれたアーサーは、正に蛇に睨まれた蛙。首を横にぶんぶん振ると、彼女はにニコッと微笑んだ。
「気にしないで、私たちに出来る事があれば力になるわ。、それにリーマス・ルーピン。」
「わぁっ、ありがとうございます。」
「えっ?!何で僕のこと...」
嬉しそうなの横で、ドキッとするリーマス。
「あなたたちは悪い意味で有名なのよ。」



モリーと、(しぶしぶ)アーサーが教えてくれた時間割で、早速次の日から行動する事になった。






「よかった!今日の1限、丁度お互い空いてるの。」
「へー、そう。じゃあ頑張ってらっしゃい。」
いつものように、朝食を寮別のテーブルで食べている時、が2枚の時間割表を広げてはしゃいだ。
「リリー...」
「別に、怒ってないわよ。好きにすればいいじゃない。まぁ、私は今回ばかりは何もしてあげられないからね。」
「怒ってないって言ってるときは、大抵怒ってるんだよね。」
つん、と顔を上げて先に席を立ってしまったリリーを見て、ジェームズがこそこそ、と付け加えた。
「ジェームズ?!」
「うん、じゃあ健闘を祈る!、バーイ!!」
「うん、またあとで。」
リリーに呼ばれて慌ててジェームズも席を立つ。
「ありゃ、将来絶対尻に敷かれるな。」
彼の後姿を見送り、シリウスがハハ、と乾いた笑いをした。
「さてと、俺らもそろそろ支度しないとな。」
「支度って何の?」
残念そうに、立ち上がったシリウスを見つめるを見て、彼はニヤッと笑うとスリザリンのテーブルの、男子生徒を指差す。
「セブルス?」
「そ!じゃあなっ!」
「頑張れ、。」
片手を挙げてウィンクすると、シリウスもリーマスも、彼女を一人残して出て行ってしまった。

「〜〜〜〜〜っ!よしっ!」

はまたオレンジジュースを一杯飲むと、拳をギュッと握って、気合を入れ直した。











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