「意外だな、なんでを?
 はっきり言って、君のタイプじゃなかったよね。ああいう子。」

朝食の席でジェームズが、じろじろとシリウスを見ながら聞いた。
聞かれた当の本人は肩をすくめて、

「だからさ。たまにはいいじゃないか、なかなか可愛いし。
 俺来るもの拒まないから。」
「はっ、これだから」
「何だよ、何か文句あるのか?」

少し呆れて笑うジェームズに、シリウスはむっとして言った。
いーや、羨ましいだけさ、とジェームズはパンをくわえながら答えた。

「リーマスみたいに来るもの全部拒む奴のほうが、贅沢だと思うけどな。」
シリウスが、ちらっとジェームズの隣にいたリーマスへ視線を向けた。
彼は一瞬シリウスを見たが、またすぐに視線を皿に戻して、ぼそっと言った。

「僕は誰にも興味ないよ。あったとしても、どうしようもない。」
「ちょっとぐらいいいじゃないか。別に結婚とか同棲とかする訳じゃないし。」
「…僕がどうしようと、君には関係ないだろ。」

それを聞いたシリウスは、口をつぐんでジェームズと顔を見合わせた。
ジェームズのほうは軽くシリウスを睨み付けていた。
普段人当たりのいいリーマスだが、この友人たちの前では、大分素のままでいられるようになっていた。
ああ、朝から嫌な空気だ、とピーターは食事を頬張りながら思った。







第3話 よろしく






リリーの心配をよそに、意外とシリウスとや上手くやっていけそうだった。
頼りなくて初々しいを、彼は可愛いと思っているらしく、
時間をみつけてはちょくちょく彼女を連れ出して、二人で城のどこかへ行ったり、
夜は談話室で仲良く話したりするのを、周囲の友人たちはよく目にした。


「よう、リリー。いるか?」

呼ばれたリリーが本から視線をあげれば、爽やかなシリウスの顔が目に入った。
もちろん、彼の横にいたリーマスの姿も。

ならあっち。」
「シリウス」

リリーが持っていた羽ペンで後ろのほうを指すと、ちょうどその方角からの声が聞こえた。
彼女は嬉しそうな表情を浮かべて、本を胸に抱いて、彼らのところへやってきた。

「何やってるんだ?」
「呪文学のレポートよ。全然まとまらないし、終わらなくて…」

話しながら、は今やっと気付いたというように、シリウスの隣にいたリーマスを見た。
思わず目が合ってしまった。

「ああ、そういえばはあんまりリーマスと話したことなかったよな。」
「うん。でも知ってるわよ、リリーと同じ監督生だから。」

そう言って彼女はリーマスに向かって微笑んだ。反射的に笑い返すリーマス。

「よろしく、。僕のことはリーマスでいいから。」
「うん、よろしくね」

微笑みあう二人に、リリーはちらっと視線を向けた。

「ほら、レポートなら俺が手伝ってやるよ」
「あ、ありがとう」

シリウスに手をひかれて、彼女はほのかに頬を赤く染めて席に座った。
リーマスはそれを尻目にリリーへ声をかけた。

「リリー、邪魔して悪いけど、マクゴナガルが呼んでる。」
「分かったわ」








「何、今の顔?」

後ろでシリウスとの声が遠ざかるのを聞きながら、リリーは面白そうに笑って言った。

「リーマスが女の子の前であんな顔して笑うの、初めて見たわ。」
「そんなことないよ。」
「へえ?」

しばらくの沈黙に、2人の足音だけが妙に廊下に響いた。

「あなたがもたもたしてるから、シリウスにをとられちゃったじゃない。」
「僕には関係ない。よかったじゃないか。何か問題ある?」

きびきびとした声でそう言うリーマスに、リリーはため息をひとつ。

「その態度がやりづらくてしょうがないってこと。」
「それは悪かったね。気をつけるよ。
 …でも自分の気持ちも分からない鈍感な君に、お節介やいて欲しくないから。」
「なんですって?!」
「いてっ!」

彼女はふん、と言ってさっさと廊下を早足で進んだ。
二の腕を思いっきりつねられたリーマスは、一瞬恨みがましい表情をしたが諦め、その背中をしょうがなく追った。















(2007.11.23) 最近1話が短い(汗。リリーとリーマスがいいコンビです。そしてみんな名前が似ていてややこしい!


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