今年に入り、私たちはそれぞれの生徒たちにかける時間が増えていた。 私はハリーに守護霊(パトローナス)の魔法を教えているし、 はで、ハーマイオニーの相談に乗ったり、 バッグビーク裁判の手伝いもしているようだ。 自身の勉強もあるのに、よく続くものだと内心感心していた。 ただひとつ気になっていたのは、たまに彼女が眠れず、私の部屋へ来ることだ。 もしかしたら、以前から悪い夢を見続けていたかもしれないが、 私を頼ってくれるのは嬉しかった。 まさか、彼女が私には言えない悩みで苦しみ始めていたとは知らずに。 知ったところで、それは私にはどうすることもできないものだったけれど。 第25話 二度目の侵入者 「すごかったですね!ハリーの守護霊!!」 「ああ」 はまだ興奮冷めやらぬ様子で、ルーピンの部屋でワインを飲んでいた。 この日行われたグリフィンドール対レイブンクローのクィディッチ戦で、ハリーは見事に自らの守護霊を作り出し、 吸魂鬼に変装したドラコたちを撃退したのだった。 ルーピンの個人授業が実を結んだし、グリフィンドールも勝利したので、2人はそれを祝って楽しい時間を過ごしていた。 「きっと、まだグリフィンドールの子達は騒いでるだろうな。」 何かを思い出すような、嬉しそうな表情での隣に座るルーピンは呟いた。 「ふふ、そうですね。」 生徒たちがクィディッチに熱中するのは、いつの時代も変わらないものだった。 「でもほんとに信じられない。13歳であれだけできるなんて。私ったら全然ダメだったから。」 「やる気があるなら私が教えてあげるよ。君は危なっかしいからね。まあ、今はそれどころじゃないと思うけど」 からかうようにそう言って笑うルーピンに、は少し恥ずかしそうに微笑んだ。 「ハリーは実に勇敢な子だよ。自分の恐怖に立ち向かうために頑張ってきたんだ。 大人だって簡単にできることじゃない。」 はその言葉に、一瞬瞳を揺らせた。 「リーマス」 振り向いた彼の視線を避けるように、はテーブルに置いたグラスを見つめた。 「自分が抱いている恐怖って、克服できるものだと思いますか?」 「…怖いものがない人なんていないんだ。でも今日のハリーのように、立ち向かうことはできる。 完全に、とは言えないが、自分たちの心がけ次第で克服できると私は思うよ。」 ルーピンがふわっとの頭をなでると、彼女はまだグラスを見つめながら、小さく頷いた。 君が恐れているものは、何? そのまま、その日は穏やかな夜を迎えるはずだった。 しかし、時計の針も深夜の2時を回った頃、またしてもグリフィンドール塔で騒ぎが起こった。 突然伝令で呼び出され、は厚いガウンに袖を通し、駆け足で職員室へ向かった。 緊張した顔つきの先生方が既にほとんど集まり、既に城の捜索が始まっていた。 「こんなに警戒しているのに、またしても城に入るとは…!」 「それにしても、合言葉が犯罪者に駄々漏れとは、信じがたい話ですな。」 「今回は怪我人が出なかったんだから、まだいいじゃないか。」 スネイプの嫌味にぐっとこらえるマクゴガナルの横で、ルーピンは真剣な表情で言った。 「さあ、みな集まったようじゃから、言い争うのは止めじゃ。 残っている場所を急いで捜索してもらおう。」 怪我人が出なかったとはいえ、生徒が眠っている部屋へ忍び込み、しかも前回と同じように刃物を持っていた。 ロンが襲われたと証言していたが、先生方はハリーが狙われているものだと考えていた。 はルーピンと一緒に西の塔を見回っていた。 「やっぱり、おかしくないですか?」 無言のまま、静寂に包まれた寒い廊下を歩いていたところで、がぽつりと呟いた。 ルーピンは「何がだい?」と白い息と一緒に吐き出した。 「なんでブラックは刃物を持っていたのに、誰にも危害を加えないんでしょうか。 ロンが悲鳴をあげただけで逃げ出すなんて。それに、」 は窓から真っ暗闇に視線を投げて、思い出すように言った。 「もう城にはいる気配がないじゃないですか。姿現しも姿くらましもここではできないのに。 2度もそれをやってのけてる…」 「…私たちが考えも及ばない方法を使っているのかもしれないよ。」 その言葉を聞いて、彼女はルーピンのほうを見る。 どこか、彼の深意をさぐっているような目で。 ルーピンは彼女に聞かれたら、話してしまおうかと思った。なら、きっと今の自分の気持ちを分かってくれる。 けれど、彼女はそれ以上聞かず、また視線を行く先に向けて、白い息を吐いた。 「…あの人の目的って、何なんだろう」 複雑そうな表情でそう呟いて。 もしかしたら、もう感づいているのかもしれない。 (2007.7.14) この先どうしましょう… お気に召しましたら(*^-^*)→ *web拍手を送る back / home / next |