閑散とした数日間が過ぎ、ホグワーツにも新しい年が訪れた。
新学期がはじまると共に、城内はまた賑やかになった。

久しぶりの生徒たちの元気そうな顔を見るとほっとする。
は嬉しそうに大広間のテーブルを眺めていた。

隣に座るルーピンも同じような気持ちだったのだろう。
が彼のほうを見ると、それに気付いてルーピンはにっこりと優しく微笑む。
そんなひとときがとてもしあわせだった。





Believe in you.

第23話 教え子と先生






「「ー!!」」

呼び捨てにされて振り返ると、双子が楽しそうにこちらへ走ってくる。
は立ち止まって呆れた顔をした。
あのにやついた顔を並べたときは、決まって悪巧みをしているものだ。

「クリスマス、どうだった?」
「何かあった?」
「え?!べ、別に普通に楽しいクリスマスだったわよ。」

そっけない返事にフレッドとジョージはにやついて顔を見合わせた。
「まさか、最近のとルーピンを見ているとそんなはずないよな?」
「なっ、なんで?どうしてルーピン先生が出てくるんですか?」
「えっ?、それで隠してるつもりだったの?」

逆に聞き返されて、赤面したは目を丸くする。てっきり生徒なんて誰も気付いていないと思っていた。
別におおっぴらにルーピンと付き合っているつもりはなかったから。

「まぁ、一部の生徒の中じゃ噂になってるぜ?」
ってそういうの鈍感だったんだな。ああ、違う、周りが見えないぐらい夢中なのか!」
2人がクスクス笑うのを見て、本当に恥ずかしくなる
耐え切れず、フレッドとジョージを無視して廊下を歩き出す。

「俺たちのおかげだな!」

とジョージが後方で言ったのを、は聞き逃せなかった。





『まったく信じられない!!!!』

スネイプの部屋へ毎晩通っていたのを、の知らないところでルーピンに告げ口したらしい。
どういう趣味なんだ、と憤慨して、双子に謝らせる代わりに教室の掃除を命じた
ズカズカと廊下を歩いていて、ふと、以前スネイプの部屋へ迎えに来たルーピンのことを思い出す。

『もしかして、ちょっとやきもちやいてくれてたのかも…』
そう思うと少し嬉しくなってしまう。違うかもしれないけど。


自分でも気味が悪いと思うほど、にやけた顔を隠せないままはスネイプの部屋を訪れた。
無理がたたって倒れてしまった以降、は平日だけ勉強をしにスネイプの部屋へ行くことにしていた。
クリスマスの日にスネイプに対して少し感じた違和感も、どうやら気のせいだったようだ。
いつ訪れても、その恩師は相変わらずの仏頂面だし。

「何をにやけている。気味が悪いな。」
「いいえ、なんでもないんです。」

にやけた顔を無理やりこらえると、は読みかけている本をまた開いて読み始めた。
まだまだ当分終わりそうにない量だ。それでも少しずつ、身に着いているのが実感できていた。
ふと、スネイプが自分のデスクから立ち上がり、教室のほうへ向かう。

「あれ、先生どこへ行くんですか?」
「奴の薬を煎じるんだ。」
それが脱狼薬のことを指していると分かって、も立ち上がった。


「この薬に毒を盛ってやろうと何度思ったことか。」

手際のよい調合を終え、鍋をかきまぜていると、スネイプは口角を上げて呟いた。
物騒な物言いには目を丸くする。

「そんなにルーピン先生のことが嫌いなんですか?」
「そうだ」
迷うことなく答えが返ってきて、鍋の中の液体を見つめながら、は少し複雑な気持ちになった。

「じゃあもし私が結婚式あげても、スネイプ先生は来てくれないんでしょうか」

バキッ

鍋をかきまぜていた棒が折れた。
スネイプは一度を睨み付けると、杖を振って新しい棒を呼び寄せた。

「我輩に祝う気など毛頭ない。」
「そんな、ひどいです。」
「…それよりも、お前は本当にそれでいいのか?」
「え?」
真剣な表情を向けられて、は驚いてスネイプを見つめた。
その言葉は、彼女のことを心配しているようにとれる。

「大丈夫ですよ。ルーピン先生が人狼であってもなくても、変わりませんから。」

にこっと微笑むと、はまたすぐに視線を鍋に落とす。
幸せいっぱいなのに、スネイプに言われたことで、はなんだかまた心が迷いそうな気がした。

正直、ルーピンの全てを受け入れられているのかどうか、自分にも分からなかったから。
自分が恐れている部分に目を瞑っているだけかもしれない。

そんなを少しの間見ていたスネイプも、また視線を鍋にもどし、薬をかきまぜ始めた。



「ありがとうございます」

のそっと囁かれた言葉に、スネイプは眉を寄せた。


ならば、なぜそんな顔をするのだと。













(2007.6.24) 22話のあとは書きにくかったです。


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