また倒れてしまった? と驚く暇もなく、目を覚ましたらスネイプ先生のベッドで寝かされていたし、 目の前にはいつになく無表情のルーピン先生の顔が。 まさか、なぜあなたがここにいるんだろうと、私の頭は少々混乱気味だった。 ルーピン先生に脱狼薬のことがばれていやしないか、と 彼に手を引かれながら、デスクの上の本を見ながら、そればかり心配していた。 去り際にスネイプ先生に謝ると、 「おかげで面白いものが見れた」 と、笑っていた。 先程の彼らの会話など露知らず、私は首を傾げた。 第17話 心のうち 「無理のしすぎだよ。何のためか分からないが、体を壊したら元も子もないだろう。」 「…すみません。あの、ありがとうございます。」 が自室のベッドに腰掛けると、付き添ってくれていたルーピンが横に座り、彼女を見つめながら言った。 怒られているようで、は落ち込んだ。 それに、なんだか見つめる彼の瞳に感情がこもってないような気がした。 だから素直に聞いてしまった。 「何か、あったんですか?」 なんて鈍感な人なんだ、とルーピンは心の中で思った。自分はこんなにも、苦しいというのに。 「分からないのか?君が私に隠れるようにセブルスの部屋に行っていたのが残念だったんだよ。」 それに、どうにも先程のスネイプの言葉が、自分を縛り付けてしょうがない。 思わずきつい口調になってしまっていた。 「それは、変に心配されたくなくて、なかなか言い出せなかったんです!」 彼の秘密を知っていることは黙って、薬を作れるようになりたかった。今はばれて欲しくない。 彼のほうから話して欲しいから。 「薬は…病気の人たちに少しでも役立ててほしいと思って、スネイプ先生に本をお借りして研究しているんです。 私が勝手にやっているだけで…本当に、それだけですから。」 ああ、なんでこんなに悲しい気持ちになるんだろう。 私はあなたのためにやっているのに、そんなふうに思われるなんて。 私の行動がまた軽率だった? だんだんと尻すぼみになっていくの声に、はっとして、うつむいた彼女の顔を覗き込むルーピン。 「?」 「私が、もっと素直に話していればよかったんですよね。ごめんなさい。」 「違う、君を責めている訳じゃないし、疑っている訳じゃないんだ。、」 ずっと下を向いたままのの、声だけがか細く震えていた。 「ただ、もう少し君に信じてもらいたかったんだ。それに、会える時間が減って正直寂しかったしね。」 ルーピンは、何気なく本音を言ったつもりだった。がふと顔をあげて、彼の瞳を見つめた。 何かを探るような視線だった。 「本当だよ。君が一生懸命やっていることだから応援するけど、ほどほどにね。 体は大切にしないといけないよ。」 ようやく、ルーピンは優しい眼差しで微笑んだ。も少し切なそうな顔をして、微かに笑った。 伸ばした腕でを抱きしめると、嫌な思いをさせてすまない、と言ってルーピンは彼女の頭を撫でた。 罪悪感で胸がいっぱいになりながら。 (が傷つく前に、身をひこうとは思わんのかね?) 彼が言ったことは、正しいのだ。 ルーピンが部屋から去った後、はベッドに横になり、外の景色を見上げていた。 空が曇っているため、真っ暗な夜空だ。そこには月も星もない。 だんだんと、涙がじわり、溢れてきた。 視界がどんどん歪んでくる。 悲しいのか、切ないのか、憤りを感じているのか 自分でも良く分からないけれど、 (もう少し君に信じてもらいたかったんだ) ルーピンのその言葉に、胸がしめつけられるようだった。 そう、確かに私もあなたを信じていなかったかもしれないけれど、 「信じてもらいたいのは、私のほうなのに」 そう言葉にした瞬間、ぽとり、と涙がシーツに落ちた。 まだ彼は秘密を打ち明けてくれない。 心を開いてくれない。 私と接している時だって、きっと悩んでいる。 いつも心から笑って欲しいのに、どこかで感情を押し殺してる。 待とうと思った。 彼が打ち明けてくれるのを。 心を開いてくれるのを。 でもいつもそんな瞳をされていると、自分の無力さがたまに嫌になってくる。 助けを求めるような彼の瞳を見るたびに 情けなくて、切なくて。 自分ができることをやればいいんだ、 という決心も揺らいでしまう。 焦ることはないのに。 好きなのに、私にはどうすることもできないの? あなたを幸せにしたいのに。 「…ルーピン先生……」 口にしたその名前が、とても愛しかった。 (2007.5.31) 情緒不安定。強くなってほしいですね。 お気に召しましたら(*^-^*)→ *web拍手を送る back / home / next |