『はぁ、なんだかクラクラする…』

思えば、こんなに勉強したことなんて久しぶりで。
しかも仕事もしているのだから、体を休めないといけないのに休んでいなかった。
毎日夜遅くまで、週末には明け方まで勉強しているのだから、
疲れているのは当たり前だった。

『自己管理できないなんて、最低ね。
 明日からはほどほどにしておこうかな…』

いつもよりだるくて重い体を、なんとか立たせたときだった。


痛みとともに、視界が一瞬で消えてしまった。





Believe in you.

第16話 忠告





「おい、?!」

いつも通り勉強をしていたが、急にゆらっと立ち上がったと思ったら、いきなりソファに倒れこんだ。
その拍子にゴツンと、鈍い音を立てて。どうやらテーブルの角に頭までぶつけたらしい。
スネイプが彼女の倒れているところまで来て、様子を見ると、彼女は意識を失ったままだ。
顔色が悪く、額の右側がぶつけたせいで赤く腫れていた。

「まったく、世話の焼ける…」
ぶつぶつ、と呆れた声でそう呟き、スネイプはを見下ろした。







『スネイプの部屋だって?』

ルーピンは、イライラしながら自室への廊下を歩いていた。
フレッドとジョージのありがたい告げ口のおかげで、彼女が隠していた行き先が分かった。
しかも、双子が"あの地図"を持っているんだということも分かったのだが、今は考えないことにした。

魔法薬学を勉強しているなら、私に何を隠すことがある?
なぜ彼女は素直に話してくれなかったのだろう。
私がそんなに心の狭い男だと思ってたのだろうか。
毎晩彼女がスネイプと同じ部屋にいたかと思うと、気になってしょうがないというのは確かだ。
でも彼女を信じているから、それぐらい平気なはずだ。

誰かを好きにならなければ、
こんなに嫌な感情も起きなかったのに。

好きなのに、憎らしい。
胸が苦しくて。

―これは、嫉妬だ。






「ルーピン!話がある!」

部屋につくなり、暖炉から声が聞こえた。
今一番会いたくない相手、スネイプの声だった。向こうもイライラしているようだ。
もしかしたら彼女がいるかもしれない、と複雑な気持ちでルーピンも暖炉の上の小瓶を手に取った。

「セブルス、呼んだかい?」

平静な表情を装って、ルーピンはたどり着いた部屋に立っているスネイプに聞いた。
スネイプの事務室には、彼以外は誰もいなかった。
不機嫌そうな彼からチラリと視線をはずすと、テーブルの上に本が山積みになっていた。
ソファの上には、のローブもある。ルーピンの息が一瞬詰まった。

「何の用かもうお分かりでしょうな?」
ルーピンの、いつもと違って余裕のない表情に気を良くしたのか、
スネイプは落ち着いた声で言った。口元にも微かに笑みが浮かんでいた。

「ミス・が毎晩ここに来ていたんだが、先程急に倒れた。それでしばらく休ませていたところだ。
 もうすぐ就寝時間なのでね、仲の良い君に一緒にお引取り願おうと思って呼んだのだ。
 我輩が送ってやってもいいのだが、そこまで手を煩わしたくないのでね。」

にやり、と笑うスネイプの顔は、いかにもルーピンの心中を察して喜んでいるようだった。
ルーピンは冷静な態度につとめて、いつものように穏やかに言った。

「そうか、それは知らせてくれて感謝するよ。それで彼女は今どこかな?」
「我輩の寝室で寝かせている。」
ルーピンが眉をひそめると、スネイプは視線で寝室のドアへと促した。
ドアの取っ手へルーピンが手を伸ばした瞬間、スネイプの低い、意地悪な声が響いた。

「ルーピン教授、我輩からご忠告差し上げよう。
 たとえミス・が貴様が人狼であることを知らされ、それを受け入れたとしても、
 本当の正体を目の前にした後も同じ気持ちでいられると思うか?
 が傷つく前に、身をひこうとは思わんのかね?」

ルーピンは振り向くことも、言い返すこともできなかった。

ただ無言のまま、彼は目の前の重いドアを開けた。













(2007.5.27) リリアさん倒れすぎ…。私スネイプ先生嫌いじゃないんですよ!笑


お気に召しましたら(*^-^*)→ *web拍手を送る


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