『この歳にもなって、大人気ないな』

明らかに朝帰りなのに、隠すように嘘をつくを見たら、
ルーピンは少し腹立たしくなってしまった。
思ってたよりも彼女に執着している自分がいたことに驚きもした。


昼休みに、心配そうに話しかけに来たのことを思い出すと、
ちょっとした罪悪感にかられてしまったのだが。

「勉強したいことがあって、それでたくさん蔵書を読まなくちゃいけないんです。
 でもその蔵書が持ち出し禁止なので、夜通しそこで読んでいたら寝過ごしちゃって…」

それは本当のようだったし、気になるからといって、それ以上聞くのもおかしい。
蔵書というのだから、どこかの教室か図書室かとルーピンは思った。
どこか曖昧な彼女の言葉からは、あまり詮索して欲しくないようだとも読み取れた。
気にしていないフリをして、「無理をしないようにね」と彼が微笑むと、
は安心したように微笑み返した。




Believe in you.

第15話 双子の告げ口





それから数日が経ち、暦はすでに12月になっていた。
12月まで降り続いていた雨は、いつのまにか止み、空は乳白色になった。
そして校庭にはキラキラとした霜柱が輝き、クリスマスムードをつくっていた。


『シリウス・ブラックの手引きを、ルーピン先生がするわけ無いわ。
 先生方から聞いた話だと、ブラックはハリーを狙っているって言ってたけど、
 ルーピン先生はハリーを可愛がっているし…』

未だにルーピンをファーストネームでなかなか呼べないは、
スネイプが前に言ったことを思い出して、無意識にじっとルーピンを見てしまっていた。

「どうかした?」

2人で廊下を歩いていたが、ルーピンが立ち止まり、屈みこむ様にしての顔色を覗いた。

「わっ、な、なんでもないです!」
急に彼の顔が近くにあったものだから、は顔を真っ赤にしてあとずさった。
まだ初々しい彼女の反応が面白くて、ルーピンは楽しそうに笑った。

「そうだ。休暇の前にホグズミードに行こうと思ってるんだが、一緒にどうだい?」
「あっ、はい、ぜひ!」

突然のデートの誘いに、は嬉しそうに返事をした。







朝帰りが見つかってしまったけれど、は相変わらずスネイプの事務室へ毎晩通っていた。
昼間の空き時間でマグル学教授として自分の仕事を片付け、夕食後は魔法薬の勉強に没頭した。
どこへ行くのか見つかりたくないので、念のため部屋の暖炉を通じて行き来を許可してもらっていたのだった。
読めども読めども、一向に減らない書物の山。
それでも毎晩あくびをかみ殺しながら、は一生懸命励んだ。
「よく続くものだ」と呆れるスネイプに、『だって、ルーピン先生のためだもの』と心の中で返事をして。

でも、それに真剣に没頭するあまり、周りのことが見えなくなってきていた。
それがの悪い癖だった。



『まただ』

ドアをノックする手をとめ、ルーピンはため息をついた。
もうあれから何日経つ?
彼女が勉強すると言って毎晩留守にしているので、さすがのルーピンも少し心配になった。
教師の仕事だけでも忙しいのに、そんな2足のわらじのようなことをしていて大丈夫なのかと。
つい先日、いつものように満月が近づいて彼が体調を崩している時には、ちょこちょこと見舞いに来てくれたが。
会ったばかりのときより、は疲れているようで、目の下にうっすらとクマだってできていた。

彼女のことも心配だが、
何より一緒にいる時間が減ってしまって、ルーピンは少し寂しかった。


「そのため息」「見てられないな」

いきなり声がしたものだから、ルーピンが驚いて顔をあげると、いつもの2人組みが立っていた。
2人は顔を見合わせると、そろって肩を大げさにおろして見せた。

「フレッド、ジョージ。なら留守みたいだよ。」
「それは残念」
「と言いたいところだけど、俺たちはルーピン先生に用があるんです。」
「そうかそうか。で、なんだい?」

のんきに話すルーピンに、2人組みはふざけているのか分からない、険しい顔つきで答えた。
「ルーピン先生はいい先生だ。今までの闇の魔術に対する防衛術の先生の中では最高です。」
「ちょっとぐらい病弱で、くたびれてて、実際より歳とってるように見えても問題ない。」

片方の眉をあげて、ルーピンは面白そうに聞いた。
「何か企んでるようだね。」
「「とんでもないっ!」」
「だから俺たちは、先生なら愛しのを任せられるというか、」
「むしろ応援しています。」
「ハハ、それはありがとう。」

生徒にそんな風に思われているのは知らなくて、少し気まずそうに笑うルーピン。
それでもフレッドとジョージの話は止まらない。

「でも最近の、2人の行動を見ていると、まぁ正確には3人ですが、心配になりまして。」
「これは告げ口せねばならんと!」

フレッドとジョージはもう一度顔を見合わせると、大きく頷いた。ルーピンは訝しげな顔をした。
が誰かと一緒にいると言いたいのか?」
「その通り!先生、さすがですね。」
「俺たちは、このホグワーツ内なら、誰がどこでいつ何をしているかお見通しなんです。」
「何だって?」
彼らのその言葉に、ぴくりと反応するルーピン。
目の色が変わったルーピンに怒られると思ったのか、2人組みはゴホンと咳払いをして話題をそらせた。

「それはいいとして、が毎晩でかけている先、それが俺たち信じられなくて、」
「余計なお節介ですが、先生はご存じないようだから、知らせようと思ったんです。
 さすがに心配しているようだし。」

が毎晩通って会っているのは、」

相変わらずな表情のルーピンに対し、双子は声をそろえって言った。



「「スネイプ」」













(2007.5.26) のろのろありえない展開。そろそろ一悶着起きます♪


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