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もしかしたら、彼はここにならいるかもしれない。 もしここに居て、私に連絡のひとつもよこさなかったのなら、ちょっと文句を言いたいところだけど。 が久しぶりに訪れた、グリモールドプレイスのブラック邸に足を踏み入れれば、 控えめな音楽が流れ、部屋は暖かく、優しい光で満ち溢れていて。 子どもたちや大人たちの笑い声が聞こえる。とてもいい香が玄関先まで運ばれてくる。 まるで別世界に来てしまったようで。 そこには、彼女の思い描いていたクリスマス・イヴがあった。 「?!」 来てみたのはいいものの、なんだか話し声が聞こえる部屋に入りづらくて。 が通路でウロウロしていると、ちょうど部屋から出てきたシリウスと鉢合わせた。 もちろん、彼はとても驚いていたが、顔がほんのり赤くて口調も軽かった。 「こんばんは。あの、夜分遅くに…」 「君たちを待ってたんだ!そんなところでウロウロしてないで、早く入れよ。」 そう言って、シリウスはにっこりと上機嫌に微笑んだ。 彼がコートを脱がせてくれようとしたので、は慌てて聞いた。 「ねえ、リーマスはいる?」 「ん?なんだ、君一人なのか?リーマスは見てないが、てっきり2人で仲良くやってるのかと思った。」 シリウスの返事に肩を落とし、首を横に振る。 彼は冷え切った彼女のコートを手にとると、その肩を抱いて部屋の中へと促した。 「今夜はハリーやその友達も来てるんだ。もちろんモリーや子どもたちもね。 一人で待つより大勢で待ってたほうが、気が楽だろう?」 「ありがとう、シリウス」 力なく微笑んだが、部屋に入った瞬間、 「「メリークリスマス!」」 パン、パンという破裂音が部屋中に響いた。 「わっ!メリークリスマス!」 粉雪やたくさんの光が部屋に舞うと、双子が楽しそうに微笑んで、を迎えてくれた。 驚きながらも、急に気分が軽くなったは、思わず微笑み返した。 「!会いたかったよ!!」 「邪魔者もいないみたいだし、僕らと今夜は楽しもう!」 「あなたたち、また背が伸びたみたいね!」 双子に取り囲まれたは、彼らの言葉よりも、彼らの背丈に驚いていた。 最後に会ったときよりも、またフレッドとジョージの背は伸びていたからだ。 部屋を見渡すと、ハリー、ロン、ハーマイオニーや、ジニーの姿も目に入る。 みんなはテーブルを囲んで、おしゃべりをしているところだった。 彼らも嬉しそうな顔をして、を出迎えてくれた。 「さあみんな、もうそろそろ部屋に…あら、!」 キッチンから出てきたモリーが、目を丸くしてを見た。 「こんばんは、モリー」 「どうしたの?一人?」 驚いて部屋の入り口を見たモリーに、の後ろにいたシリウスが代わりに答えた。 「彼はまだ帰ってきていないんだ。」 「まぁ、じゃあ心細かったでしょう?さあ、そこへ座って」 の顔色を見て、モリーは優しく微笑むと、彼女を一度抱き締めた。 その腕の中がとても温かくて、は思わず涙ぐみそうになった。 そして、空いていたテーブルの端の席、ハーマイオニーの隣に座った。 「先生、メリークリスマス!」 「メリークリスマス、ハーマイオニー。でも私はもう先生じゃないのよ?でいいわ。」 「オーケー、」 とハーマイオニーは顔を見合わせて、微笑んだ。 「ほら、あなたたちはもう寝る時間よ。明日はお父様のところに行くんですからね。 、何か食べる?何も食べてないんじゃないの?」 モリーがてきぱきとそう言い、の返事も聞かずにまたキッチンへと向かった。 子どもたちは、まだが来たばかりだからと言い、特に立ち上がる素振りを見せなかった。 「ああやってうちのキッチンを仕切られたんじゃ、堪らんな。 ま、おかげで温かくて美味しいディナーが食べれるんだが。」 シリウスはシャンパンの入ったグラスをに勧めると、からかうように言った。 気が滅入っていたは、大勢の人たちに囲まれて、少し心が落ち着ける気がした。 シリウスの言う温かくて美味しい食事をしながら、は子どもたちとおしゃべりを楽しんだ。 しばらくして、子どもたちが渋々部屋へと戻ると、後片付けを済ませたモリーが、彼女の隣に座った。 酒もすすんでいい気分での正面に座っていたシリウスは、大きなあくびをした。 彼らの前には、瓶やグラスがまだ残っている。 「どうもありがとう、モリー、シリウス。 それにごめんなさい、こんな時間にお邪魔して、つき合わせてしまって…私そろそろ帰ります。」 「何言ってるの!まだリーマスだって帰ってきてないでしょう。 今晩はここに泊まっていきなさいよ。」 申し訳なさそうに言うに、モリーは首を振って答えた。 「でも…、」 が眉を寄せてちらっとシリウスを見ると、彼は真面目な顔をして頷いていた。 「そうだぞ、。ベッドならまだあるし、一人であの家に帰っても、眠れないんじゃないか?」 言い当てられたは、押し黙って視線を目の前のグラスに落とした。 自分が情けなくなった。 もう大人なのに、みんなに心配してもらって。 一人で彼を待つこともできないなんて、なんて情けないんだろう。 おまけに、日頃溜まっていたものが、口をついて出てきてしまった。 誰かに話さないと、どうにかなってしまいそうで。 「…もう、やだ…」 「何?」 ぽつりと呟いた言葉に、シリウスは首を傾げた。 「…待つのって、なんてしんどいんだろう」 ため息とともに吐き出された言葉は、むなしく部屋に響いた。 隣にいるモリーが、の肩を抱いて、よしよしと背中を撫でてくれる。 彼女は分かってくれるのだ、が今まで、どんな思いでいたか。 「そのうち終わるさ。」 シリウスは温かい眼差しで、2人に語りかけるように言った。 back / home / next |