ああっ、青春!!!



ジェームズは雲ひとつ無い、深い青空を見上げながら幸せのため息をついた。







第1話 交際宣言







学校一の人気者で、成績優秀、スポーツ万能の有名人。
そして学校一の問題児が、スキップをして秋の廊下を進んでいくものだから、
周囲の生徒たちは唖然とした表情で彼とすれ違い、その背中を見送りながら笑った。


「ピーター!」
「あっ、ジェームズ」

彼は同室の親友の一人を見つけ、やっと立ち止まった。
ジェームズのその顔には、もう「喜」の一字しか見られなかった。

「プレゼント、上手くいったみたいだね。」
ピーターも少し嬉しそうに笑って言った。ジェームズは大きく頷くと、ピーターの肩に手を置いた。

「はは、世界がこんなにも美しいなんて知らなかったなあ!」
そう言って遠い目を向けると、廊下の窓に寄りかかって外を眺める、もう一人の友人を見つけた。

ジェームズがこんなにも嬉しそうにスキップして来たというのに、彼は気付かず、涼しげな顔をしていた。
その友人にはよくあることだった。周囲に気配りをする優等生のくせに、たまに魂がどっか行ってる。
ああ、また一人の世界か、とジェームズは思う。
でも今回ばかりは、そうでもなかったのだと、後で気付いた。


「リーマス!」
ジェームズの視線に気付いたピーターが、振り返り、呆けていた彼の名を呼んだ。

「あ…おかえり、ジェームズ」

やっとジェームズに気付いて、リーマスはにこっと薄く笑った。
せっかくリリーにあげたプレゼントが成功していい気分だったのに。ジェームズは肩を落とした。

「彼女喜んでた?」
「ああ、そりゃあもう」
「よかったね、あれだけ悩んで選んでたから。リリーも喜ぶと思ったよ。」
そう言って今度はいつものように優しく微笑むリーマスに、ジェームズも笑って頷いた。

「ところでパッドフットは?」
ジェームズの問いに、リーマスもピーターも声をそろえて「あそこ」と指差した。
ちょうど目の前の校庭の木陰から、黒髪の少年が歩き出しているところだった。
隣にいるのは、最近まで一緒にいた彼女とは違う、また別の少女。

「あれ、あの子…」

普段と顔色ひとつ変えない、それでもちょっと嬉しそうなシリウスと、
隣にいる少女は頬を赤く染めて、彼の少し後ろをついていく。

じゃないか?リリーのルームメイトの」
「ああ」

鼻からずり落ちそうになる眼鏡を上げると、ジェームズは驚きの声をあげてリーマスを見た。
彼は相変わらず涼しげな顔をして、シリウスとを眺めていた。
眉を寄せてジェームズはまた視線を戻す。横目で気付かれないように、ちらちらと隣の鳶色の髪の彼を見ながら。


「なんだよお前ら、待ってたのかよ」

少女と別れたシリウスは、にかっとハンサムな顔で笑い、友人たちのもとへ歩いてきた。

「ジェームズ、何だその顔。あ、もしかして失敗したのか?」
「いや、僕のほうは大成功だったけど…」

先程までシリウスと一緒にいたの背中を視線で指し、眼鏡の奥から探るような瞳でジェームズは彼を見た。
ジェームズの言いたいことが分かり、シリウスは少し照れながら、ごく軽く言った。



「俺、今度はあの子と付き合うことになったんだ」














(2007.11.13) 1話目は短く。親世代連載しちゃいました。おじさんのほうが好きなのに(笑。


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