※原作が手元にないので、かなりいい加減設定ですが、気にせずにお楽しみください
















クリスマス。


極端に現実的でなければ、誰でも一度は憧れるだろう。

クリスマスという聖なる日に起こる特別な出来事―奇跡。


奇跡なんて、信じる人のほうが少ない?
まぁ他の人がどう思うというのは、とりあえず置いておいて。

私は幼いときから、そんな奇跡がいつか私の身にも起きるんじゃないか。
そう思って、毎年この日を楽しみにしていた。

奇跡が起きなかったとしても、それはそれでいいのだ。
その日が過ぎるまでの気分が、とても楽しくてわくわくするものだから。





でもやっぱり、



現実は思い通りにいかない。


奇跡なんて起きないし、

ロマンティックなことすら、起きたりしないんだ。


それが、現実。








All I want for Christmas

is

you.








「イヴの日は、ちゃんと帰れると思うよ」

玄関先での彼の一言に、ははっとして目を輝かせた。
自分では意識していないが、それはとっても嬉しそうな表情だったに違いない。
ルーピンはそんな彼女の様子を見て、少し困ったように笑った。

「じゃあ…時間にもよるけど、私食事の準備して待ってます。」

明るい声でがそう言うと、ルーピンは微笑んで頷いた。

「また何かあったら連絡する。」
「はい、気をつけてくださいね。」

彼はにキスをすると、ドアから出て行き、庭先で姿くらましをした。
その後姿を見送ったは、切なそうな表情をして一度、ため息をついた。
また会えない日が続くことに、胸が寂しさで押しつぶされそうで。






今まで平穏に、幸せに2人で暮らしていたのに。
今年の夏先から、その生活が一変してしまった。

ルーピンは、再び動き出した不死鳥の騎士団の任務で、それまでの仕事も辞め
家を空けることが多くなった。近頃は何週間も会わない日々が続いている。
それも、いつ帰ってくるか、またいつ出立するのかも定まっていない。
の仕事もあり、すれ違いになったりすることもある。

彼女はこんな生活が、正直、耐えられなくなってきていた。

を心配させないようにするためか、余程重要なことを任されているのか、
とても危険なことをしているのかは分からないが、
ルーピンは彼女に、あまり任務の内容を伝えてはいなかった。

も、たまに会うルーピンがひどく疲れているから、必要以上に詮索しなかったし、
我侭を言うことも、甘えることも我慢していた。
自分のいる家が、彼にとって安らげる場所であって欲しかったから。

でもやっぱり自分も力になりたくて、彼がどういう状況に置かれているのか知りたくて、
騎士団に入りたいと言ったこともあった。
もちろんルーピンやスネイプの反対を押し切れず、断念した。

優しいルーピンのことだから、きっとの気持ちも分かってる。
それでも、やらなくてはならないことがある。どうしようもないのだ。

だけど、我侭だって分かっているけど、
は寂しくてたまらなかった。

そして、不安でたまらない。
彼の身に何か起きたら、どうしようかと。

人知れず眠れない夜が続いていた。







「さぁ、はりきって飾りつけようっと!」

は1年ぶりに部屋へ運んだもみの木を見上げて、杖を持って意気込んだ。
彼女にとってクリスマスは大好きなイベントだったから、楽しみにしている気持ちも人一倍だ。
それを分かってか、ルーピンはイヴの日には帰ってきてくれると約束をしてくれた。
その約束が、彼女にとってはとても嬉しいことで。それまでの欝な気分も晴らしてくれる。
1年前には二人で飾り付けたツリーも、今年は一人で飾るが、それでもよかった。

プレゼントを選んだり、家の外観にもデコレーションをして。グリーティングカードを書いて。
毎日毎日、帰宅してはカレンダーに印をつけていく。

まるでサンタクロースを待つ子どものように、は楽しみでしょうがなかった。
そして今年のクリスマスは、何より素敵な贈り物があるから、きっと記念すべき日になるはず。





そのはずだった。






イヴ当日になるまで、ルーピンからは何の連絡もない。

は壁にかけてある時計を見上げて、小さくため息をついた。
ソファの上で、しばらくだらしなく寝そべって本を読んではいるが、一向に頭に文字が入ってこない。
先程までつけていたラジオも、クリスマスの曲ばかりで寂しくなるから止めていた。

もう夜の9時だった。

ルーピンの姿はどこにもない。連絡も無い。
確かに、時間は聞いてなかったけれど、イヴには帰ると約束をしていた。
食卓に並べられた食器も料理も、もう冷めてしまっていて。
一人だから、はとても食事をする気にもなれないし、彼をもうちょっと待ってみようと思った。
今までの陽気な気分から一転、気が重くなってきていた。
カーテンを開ければ、外は雪が降り始めていた。普通なら、なんてロマンチックな日だろうと思う。



「…リーマス…」

さすがに時計の短針が12という数字に近づくと、も心配になってきた。
彼が約束を破るなんて思えない。何かあったんじゃないかと不安になる。

いてもたってもいられないは、部屋の明かりも消さず、外へと飛び出した。















(2007.12.23) なんと!4ページあります。ご堪能くださいませ。マライアの曲を聞くとクリスマスって感じ!




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