「先生っ!!私、先生の事が好きなんです。お付き合いして頂けませんか?」
「断る。我輩は君のような子供に興味はない。しかし、気持ちだけは有難く受け取っておこう。」
「はっ?!私は本気なんです!どうして子供だからと言う理由で、取り合ってはくれないんですか?」
「ミス・、寝言は寝てから言うものだ。さぁ、早く出て行け。」

勇気を振り絞って告白したと言うのに、彼に冷たい言葉で教室を追い出された。
ショックを受けた私は、泣きそうになるのを堪えながら、その場を走り去った。







The counterattack









こういうところが子供なのかもしれない。

あっけなくスネイプ先生にフラれてしまった私は、ガツガツと夕食の席でやけ食いをしていた。
周りで見ていたハリー、ロン、ハーマイオニーが、あんぐり口を開けて私を見る。
ものすごく、ショック。
ろくに私のことなんて見ないで、考えもしないで、悩みもしないでいきなり振られた。
私と先生の年の差はかなりあるけど、もうちょっと優しく振って欲しかった。
いや、でも優しいスネイプ先生なんて、スネイプ先生じゃないんだけど。

なんだかむなしくて、無性にガキの自分が腹立たしくなって。

「落ち込むなよ、あいつよりいい奴なんてたくさんいるぜ?
 むしろ、あいつよりいい奴しかいないと思うけどさ。」
ロンが苦笑いをしてそんなこと言うものだから、思いっきり不機嫌な目で睨みつけてやった。
「ま、まぁ。私の分のパンプキンケーキもあげるから、元気出して?」
「ありがと。」
ハーマイオニーが気を使って差し出したケーキも口に含んで、私はジトリ、と教職員の座る前のテーブルを見た。
先生たちは誰もそこにはいなかったけど、空席のスネイプ先生の席を見て、こんな感情おかしいけど、悔しくなる。

スネイプ先生のバカ!!






「あぁっ、"恋"ですか!なんて美しい響きなんでしょう!!
 ミス・、私が恋の話しをすると長いですよ。なんせ私は4歳の時から....」
「黙れ!!貴様ら、なぜ我輩の研究室にいるのだ?」

ロックハート先生がスネイプ先生の研究室の机に(無断で)座りながら、うっとりと話し始めたと言うのに、
スネイプ先生は額に青筋を立てながら、彼を毛嫌いするように、睨みつけていた。

「?なぜって、決まっているじゃあ、ないですか。」
白い歯を見せつけながら、ロックハート先生は自分の言葉に酔いしれながら続ける。
「私の隣にいる、この花のように可愛らしいが、こともあろうにセブルス、君に"恋"してるんです!
 彼女はわざわざこの恋愛経験豊富な私に"恋"の悩みを相談しに来てくれたのだから、私が力になるのは当然の事でしょう?」
いちいち"恋"の部分を強調する先生に、さすがの私も苦笑いをしてしまった。
スネイプ先生はすごく嫌な顔をしてロックハート先生の話を聞くと、次に私を睨みつける。
私はスネイプ先生に仕返しがしたかったんだけど、かなり効果があったみたい。

「ロックハート、これは当人同士の問題だとは思わんかね?」
いつにも増して毒々しい低い声で、スネイプ先生がそう言うと、ロックハート先生は肩をすくめて手を広げる。
さすがに無神経な先生でも、スネイプ先生の雰囲気ぐらいは読み取れたみたいだ。
「まぁそうですね。お二人でよく、将来のことを話し合う時間が必要でしょう。
 それではミス・。私は外で待ってますよ。結果が聞きたいしね。」
そう言ってウィンクを私にすると、彼はニコニコしながら部屋を後にした。本気で待っているつもりだろうか??

バタン、と扉が閉まった音を確認すると、
黒いローブを翻した先生は、私を魔法薬がたくさん置いてある棚の前に手招きして呼んだ。
溜息と同時に、呆れたような視線が私に降って来る。

「ミス・。君はもう少し大人だと思っていたんだがね。」
並んでいる魔法薬の瓶を見つめているフリをして、私はチラリとスネイプ先生を見上げる。
「私はまだ子供ですから。だから、相手にもしてくれないんですよね。」
「そうだ。その通りだ。」
拗ねたガキ、私の顔が瓶にゆがんで反射する。
「......ひどいですよ、先生は。」
「何だ?」
スネイプ先生が私に向き直したので、私もパッと先生の顔を見上げた。

「ちゃんと私を見てください!私は子供だけど、生徒だけど...先生を思っている気持ちは誰にも負けないんだから!」

真っ赤になっているのだろう。
そう、自分でも何を言っていたのか分からないけど、言い終わった後、スネイプ先生の顔を見てものすごく恥ずかしくなった。
だって、先生が驚いたと思ったら、その次には笑っていたのだから。初めて見た、その笑顔。

「そうだな.....可能性は否定しない。」

ポツリ、とそう呟かれた言葉。

「え?何ですか?」


「君はまだ幼すぎる。しかし、時間が経てば、自然と君も大人になり...我輩の気持ちも変わるかもしれん。」

驚いて口を開けたままの私。

「その可能性だ。」


スネイプ先生はパッといつもの表情に戻すと、少しだけ照れくさそうに瓶を整頓し始めた。

「そ......それは、」

思わぬ先生の反応に、ドキドキと私の胸が高鳴っているのが分かる。
動かせない口を一生懸命操作して、スネイプ先生を見上げながら、私は言葉を綴った。

「...大丈夫ですよ。....私、絶対先生が、気に入るような子になりますから。」



またスネイプ先生が、私を見てフッと笑ったので、私もニコッと微笑み返した。

「まぁ、君の気持ちがそれまでに変わらなければの話だ。」
「だーいじょうぶです!お任せください!!」
一体、どこからくるんだろう、その自信は。でも、胸の奥から湧き上がる先生への愛しさは、ずっと変わらないと思う。

「では、罰としてこの棚と瓶を全て拭くんだな。」
「えーー?!何の罰ですか?」


私は罰の掃除が終わり、部屋を出るまですっかり忘れていた。

ロックハート先生が一人楽しみにして、この部屋の外でずっと待っていてくれたことに。





「フフフ、私はさしずめ、"恋"のキューピットだね?」



寒い廊下に長時間いた先生は、次の日熱を出したと言う。















(2003.2.23) いやぁ〜実にスネイプ先生が偽者で、今読み直すとまいっちゃいますね。


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