「あわわわわ....ちょっと、降ろしてよシリウス!!!」
「だーめ。あと1時間以上空いてるんだろう?」
そう言いながらシリウスはを捕まえている腕にギュッと力を込めると、
間近にある彼女の髪に顔を近づけ、嬉しそうに微笑んだ。






Monopolize







「ねぇ、ほんとうに....聞いてるの、シリウス?」

少し震える声で呼びかけてみるが、後ろから自分を抱きしめている彼は一向に動こうとはしない。

「んー?」
「だから、早く降ろしてよ!!」

じたばたして彼の腕を今すぐにも解きたいというのに、それは侭ならない。

休み時間。
はシリウスに半ば強引に連れられ、校舎の脇にある大木の前にやってきた。
ちょうど天気の良い一日で昼食もすんだため、はてっきり、この木陰で昼寝でもするのかと思った。
しかし、
『登ろうか?』
と、ニヤッとシリウスが自分にいやらしい笑みを浮かべ、が返事をする暇もなく、
あっという間に高くて丈夫な幹の上に連れて行かれた。

二人一緒に乗っているが、幹は丈夫なせいかぐらつきもしない。
しかし、は真っ青になって、冷や汗をかいて、早く降りたいと叫んだ。
なぜなら、彼女は高所恐怖症だったからだ。


「いい加減にして、シリウス。」
今度こそ、とは声を低くして言ってみた。もちろん、自分のすぐ後ろの彼の表情は見れない。すると、
「いいぜ。」
と言って、いきなりシリウスがを抱いていた腕をパッと放した。
「えっ?」
途端に、体が揺れ不安定になって、このままじゃ危険だと察知したは、
すぐに解かれたはずの彼の腕を掴み、自分のお腹の辺りに持ってきて、きつく握り締めた。
動悸が激しく、さらには真っ青になりながら、涙目で訴える。
「もう、やだぁ.....、何でこんなことするのよ。こんなに嫌だって言ってるのに......!」
とうとう泣いてしまったは、肩を揺らしながらシリウスの腕をさらにギュッと掴む。
「おい、?!」
ここまで怖がっているとは知らずに、シリウスは自分の胸の中で泣いているを見て慌てた。
「うわっ、悪ぃっ!悪かったってば!!」
彼女の泣き顔に対する罪悪感に耐え切れず、シリウスは身軽に彼女を抱いて、木の幹から地面へ着地した。
直後。


バチンッッ!!

「いてぇっ!!!」
シリウスの腕を急いで解き、振り返った途端は彼の頬を平手で殴った。
「バカッ!!もうっ、本当に死ぬかと思ったんだから!!」
「だから、謝ってるだろ?!」
「私が高いところ苦手だって知ってるでしょう?なのにどうして....」
は手の甲で涙を拭うと、今度は顔を赤くして口をとがらせる。
シリウスを睨むと、彼は赤く腫れた頬に手を当て、傷ついた子犬のように悲しそうな瞳をして、を見ていた。
「......だからだよ。」
「え?」
首を傾げるに、逆に口をとがらせ、すねたシリウスは言葉を続ける。
「もうすぐ飛行訓練のテストだろ?お前、全然高く飛べてないから....。」
そう言って、シリウスはチェッと舌打ちをする。は驚いたように彼の顔を見上げた。
「そ、....やだ。なんだ。だったら、最初からそうと言ってくれればいいのに.......。」
も気まずそうに下を向くと、か細い声で言った。
「.......ごめん.....」
彼を叩いてしまった、赤い手を見つめながら、は何だか嬉しくて、また涙を流した。

「いいぜ。じゃあ、膝枕でもしてくれよ?まだ時間は、たっぷりあるんだしな。」

そう言ってゴシゴシ、との目から零れた雫を自分の指で拭うと、
シリウスは彼女の手をひいて、その木陰へと寝そべった。


「でも、今度やったらコロスよ。」


上からボソッと聞こえた彼女の言葉に、シリウスは苦笑いをしながら思った。



今度、何かあったらまたを木の上に連れて行ってやろう、と。















(2003.2.21) 私シリウス夢なんて書いてたのか!と驚いた作品。なんか…若いなぁ(笑


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